在宅医療とは

最近、在宅医療という言葉を新聞等のマスメディアで取り上げられることが多くなってききました。しかし、実際に在宅医療を理解されている方はまだそう多くはないのではと思います。
在宅医療は、病院・診療所に入院して行う“病棟医療”、病院・診療所に通院して行う“外来医療”と並ぶ医療の3本柱のひとつで、今後、超高齢化社会を迎えるわが国で、通院困難になった患者さんや人生の終焉を自宅で迎えたい方がその人らしく快適に自宅で療養する医療のことです。なぜ、自宅が良いのか、それは、病院は非日常の場であるのひとことにつきます。  もちろん、病気の診断・治療に、病棟医療、外来医療ともに不可欠なものですが、それが一段落ついた後に、引き続き医療的な介入が必要で、慣れ親しんだ日常的な場である自宅で生活する際に医療を提供することです。
在宅医療には、医師が行う往診と訪問診療、看護師の訪問看護、作業・理学療法士の訪問リハビリテーション、歯科医師の訪問歯科診療、薬剤師の訪問薬剤指導があり、いずれの職種も患者さんのご自宅に訪問して行います。
医師が行う往診と訪問診療の違いは、前者は患者さんの求めに応じて、急変時に診察に伺うことで、後者は、何らかの疾患を抱え定期的に医療を受ける必要があるにも関わらず、 外来通院が困難な場合に、定期的(1週間に1回とか2週間に1回とか)に訪問し患者さんの病気の状態の把握を行うことをさします。
在宅医療がうまくいくポイントはいかに介護力を確保するかにかかっていると思われます。ただ、最近よく話題に上っているように家族の介護疲れを防ぐことも重要です。そのためには、介護保険制度の上手な利用が不可欠で、これはケアマネージャーとヘルパー等の人的援助やショートステイ・デイサービス等の利用など、詳細にわたって相談することをお勧めします。
現代の在宅医療が一昔前の往診と違うところは、今まで書いてきたように、多職種が関わるという点です。様々な職種が関わり、それぞれの視点で患者さんが自宅で生活しやすいように話し合いをおこないながら支えるようになっています。ですから、以前と比べると尿を出す管、酸素吸入の管、点滴をいれるポンプをつけている方、人工呼吸器をつけた方などが在宅へ移行しやすくなっています。在宅医療の話しをすると、病院から見放されたと思われる方が多くいらっしゃいますが、在宅医療へ移行したからといって、病棟医療、外来医療との縁が切れるというわけではありません。  病状の変化等、必要に応じて紹介元の病院や病気の状態によっては、新たな病院と連携をとるようにしています。
在宅医療を依頼したいとお考えの方はかかりつけの先生にご相談されてください。また、現在、入院中の患者さんやそのご家族の方で在宅医療を依頼されたい場合は、病院の地域連携室または病院主治医にご相談されたら良いかと思います。
在宅医療は個々の患者さんの状態や家庭環境等、取り巻く環境によって対応が異なります。もっと早く相談をされていたらよかったのにと思うことがしばしばあります。